日本国内の日本語学校で教える場合は日本語を使って日本語を教える「直接法」が多くの学校で採用されています。
しかし、学校により授業の進め方は様々です。
一番多い授業の進め方は「文型シラバス」で文の構造を中心に教え、そこから少し長い文を言わせたり会話につなげて行くやり方です。
ですが、この方法では、「いつ」、「どこで」、習った文型を使うのかわからず、たくさん文型を習ったはずのに全然会話ができないという学習者も多く、問題視されました。
そこで、最近注目を浴びているのが、「タスクシラバス」で日本語を教えると言うものです。
今回はこの「タスクシラバス」でどうやって日本語を教えているのか紹介します。
タスクシラバスでの教え方
「タスク」とは日本語で「仕事」や「作業」、「課題」などを意味します。
そして「タスクシラバス」は場面と課題を与えて、その課題を達成することをゴール・目標とする考え方で、「文型を覚えること」がゴールではありません。
例をあげるとすれば、「デパートで買い物ができる」、「料理の作り方を紹介できる」などです。
これらの課題を達成するために、学生はどんな日本語を使うのか学び、最終的にはロールプレイやプレゼンテーションなどを通して、会話力の向上を図ります。
授業では場面と課題が設定されるわけですから、いつ・どこで日本語を使うのかイメージしやすく、学習者が実際にそういった場面に遭遇した場合に、その場面で必要な日本語が口から出てきやすくなります。
タスクシラバスで、このシラバスで日本語を教える場合、タスク中心ですので最初に文型を教えるといったことをしません。
まずは、既に知っている知識や言葉・文法などを使って、その場面で使われる言葉や文型はどんなものかを考えます。
それから、実際にCDを聞いてどんな会話をしていたか表現を学び、最後に教師が詳しく文の形について説明して、練習します。
- その場面で使われる言葉や表現はどんなものか考える。(推測)
- 考えた後で、CDを聞いてどのように話しているか聞きとる。(発見)
- 教師が文型を説明して、練習する。(理解・習得)
この手順だけ見た場合、「じゃあ、どうやって直接法で教えるですか?」と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、タスクシラバスで教える場合、「必要な時は英語(学習者の国の言葉)」、それ以外は「日本語」というように直接法と間接法を混ぜて授業を進めて行くことになります。
「必要な時」とは例えば、場面の説明やタスク与える時、指示をする時などです。日本語を勉強し始めた学生に対して日本語で場面を説明したり、タスクを与えることはこんなんですから、英語や学習者の国の言葉を使って授業を進めていきます。
ですから、タスクシラバスで教える場合は、授業を運用できるぐらいの英語力が必要ということになります。
タスクシラバスが採用されている教科書の例
最近、人気があるのはこの「できる日本語」でしょう。
文型の導入順序も「みんなの日本語」と少し似ているので、「みんなの日本語」を使用している学校では、会話練習の補助教材として使っている学校も多いです。
国際交流基金が開発した教科書「まるごと 日本のことばと文化」も見逃せません。
国際交流基金での日本語研修にはもちろん、少しずつ大学や民間の日本語学校でも使われ始めています。
絵がカラフルでとっても見やすい上に、学習者の興味を引くようなトピックもあるので、楽しく日本語を勉強できる点が魅力的です。
最近では、日本語教師養成講座で有名なヒューマンアカデミーでもタスクシラバスを使った教材「つなぐ日本語」が出版されました。
公式サイトには無料の絵カードが用意されている他、教え方ガイド・ポイントなども公開されており、初めて利用する先生にも使いやすいように工夫がされています。
タスクシラバスで日本語を教える時の注意点
タスクシラバスで日本語を教える時は、プロジェクターで場面などを大きく写して授業をした方が教えやすいです。
わざわざ紙を印刷して、教えるなど非効率な教え方は避けるようにしましょう。
さいごに
今回は最近注目されつつある「タスクシラバス」での教え方について紹介しました。
もちろん文型シラバスにも良い点があり、どちらが良い、悪いを決めることはできません。
学習者の学習用途や状況なども加味し、どちらの教え方も取り入れながら柔軟に教えることがとても大切だと思います。
これから日本語教師を目指す皆さんは、従来の文型中心の教え方だけでなく、タスクシラバスでの教え方もしっかりと学び、良い授業ができるようにたくさん悩み考えてください。
試しに1冊、タスクシラバスの本を買ってみて、「みんなの日本語」や「げんき」とどういう違いがあるのか分析してみるとそれぞれの良さや欠点がわかっていいと思いますよ。